菓子製造許可付き自分の工房(キッチン)を作りたい

キッチンメンバーさん(おつまみスナック製造)が、いよいよ自分の工房を作る方向で動いていて、相談に乗ってきました。

お菓子作りを「本業」にする場合は、やはり、自分の工房を持つ方が、何かと便利ですね。

今回は菓子製造許可付き自分用キッチンを持つまでのステップやコツ、注意点などについて、簡単に説明します。

ステップ1 物件探し

まずは物件探しから。

物件を探す場合、ほとんどの人が「ネットで情報を探して不動産屋に行く。」というパターンをたどります。

正しい物件探しの手法ではありますが、それでは限界があります。

なぜなら、ネット情報は誰でも見れるので、条件の良い物件を見つけても、すでに成約済みだったり、そもそも「釣り」のための情報だったりします。

「釣り」とは、おいしそうな情報載せておいて、お客を不動産屋店舗に誘導するための作戦です。

不動産屋も競争ですから。

ネット情報もひとつの方法ですが、物件を持ちたい地域が決まったら、その地域の小さな不動産屋に足を運ぶのが原則です。

「わんさか」とは言いませんが、ネットには載ってない物件情報に出会いことが多いです。

空き家が狙い目?

菓子製造なんて自宅以外のキッチンであれば、どこでもいいわけですから、商店街にある必要もなく、路面(1階)にある必要もないわけです。

建物が古かろうが新しかろうが、水道と電気はきてたら、それで十分。

そこで狙い目なのが空き家。

都心部は空き家は少なめですが、ちょっと離れると、放置されている空き家は腐るほどあります。

ボロすぎたり、交通の便が悪すぎたり、売りたくても売れない。貸したくても借り手がいない。

そんな建物を「足」で見つけれたら最高です。

「建物のメンテナンスする代わりに家賃は無料で。」

そんなことも不可能ではないですよ。

空いてる家や店舗は、必ずしも不動産市場にでてるとは限りませんからね。

家賃は3日で回収

自分で店舗を借りる場合、一番気にしないといけないのが家賃!なんと言っても家賃!

目安として3日分の売り上げで回収できるのが目安です。

1日の売り上げが2万円程度見込めるなら家賃は「6万円以内」と言うのが大原則。

6万円の家賃なのに1日当り1万円の売り上げだと終わります。

いくら魅力的な物件でも、とにかく家賃は妥協しないのが物件選びのコツです。

床排水が決め手

菓子製造許可の必須設備のひとつが床排水。

床に排水溝がついていて、水を流すことができることが条件です。

マンションとかは不可能?と思われがちですが、意外に裏技があったりします。(多少の工事が必要)

もともと飲食店だった店舗などは必ず排水口が付いていますが、ない物件でも「床を上げる」ことで排水口がつけられる場合があります。

アパートでも大家さんが「好きに改造していいよ。」と言ってくれる場合や、1階にある場合は工事はしやすくなります。

いずれにせよ、床上げや排水口の取り付け工事はDIYでできない限り、業者に頼むのが一般的です。

最低限知っておきたい電気の話

電気オーブンレンジを使う場合は、コンセント1個に対して1台です。

2台同時に使うと100%ブレーカーが落ちます。

2台使う場合は専用コンセントの回路を2つ。

3台の場合は3つ。

また、給湯器や炊飯器電気を食うので、使う設備と、コンセントのバランスは、電気屋さんと、しっかり相談して決めます。

この電気やコンセントに関する話は、意外に忘れがちで、いざオープンしたはいいものの、「電気容量不足で◯◯が使えない!😂」なんてことが起きます。

当店(カフェ)でも、オーブンを増設しようとした時にコンセントが足らず、トイレから線を引っ張ってきて、なんとか使えるようになったこともあります。(トイレは電気食わない。)

いろいろ近い

「家賃が安い」からと言って自宅から遠く離れた物件を借りてしまうケースもあります。

悪いとは言わないですが、製造前に時間を消費してしまうので、できるだけ近いところを見つけると良いです。

自宅から遠い物件と近い物件、両方あるので、その差はめちゃくちゃ実感します。

あとは、スーパーなど材料の買い出しスポットが近い場合も楽ですね。

お菓子作りの人は、粉もんやドライフルーツ、スパイスとかは富澤とかコッタとかで仕入れることが多いですが、フレッシュのものは売ってないですから。

製造するものによって必要な食材は変わるので、買い出しスポットのチェックもお忘れなく。

ステップ2 契約

物件が決まったら契約ですが、契約までに審査があります。

物件オーナーが「この人に貸しても大丈夫だろうか?」という視点での審査です。

最初のハードルと言えます。

めでたく審査が通れば、要求される書類(住民票や所得証明書など)を用意して、契約書にサインして契約完了です。

ステップ3 キッチン作り

次はキッチン作り。

と言っても、お客さんにきてもらう居酒屋やスナックではないので、カウンターや客席もいらないし、見た目も気にする必要はありません。

菓子製造許可を取るために必要な設備を揃えるだけです。

例えば、二槽式シンクは必須設備ですが、すでにシンクが付いていれば工事はいらないってことになります。

逆に、水道管だけ、あるいは蛇口だけ、という場合は、シンクを買って蛇口を接続します。

これは素人には難しいので「設備屋さん」というプロに頼みます。

料金の目安としては3〜5万円程度です。

「難しそう。」とか「お金がかかりそう。」と思われがちですが、お店を作るよりははるかに安く済みます。

例えば、畳6畳ほどの狭いお店でも200万円〜500万円くらいはかかります。

でも、菓子製造だけなら数十万から、行っても100万円くらいでしょう。

ステップ4 菓子製造許可の申請

菓子製造許可に必要な設備が整ったら、管轄の保健所に行って「審査来てね。」の申し込みをします。

この時、キッチンの図面なども届出しますが、絵心ない人の下手くそな図面でも「何がどこにあるか」がわかれば受理されます。

当キッチンの管轄は、淀川区ですが、保健所は扇町の関テレ横の北区役所です。

申し込み後、だいたい1〜2週間後に担当の方が来られます。

審査は「必要設備が整ってるかどうか?」のチェックだけなので早ければ10分もかからないです。

保健所の担当の方にオッケーをもらったら、あとは2週間後くらいに許可証をもらいに行きます。

自宅キッチン

自宅キッチンで作って販売することをヤミ製造と言いますが、その話ではないです。

工房作りと言っても、工房の中でやることって、自宅キッチンと変わらないですよね。

だから、そんなに難しく考える必要はないです。

シンクがあって、作業台や放冷台(焼いたお菓子を冷ます場所)、包装台などがあれば、それで済みます。

当キッチンはステンレス製の作業スペースが4箇所とかなり贅沢な作りにしていますが、台はステンレス製出なくても、審査は通ります。

保健所の資料を見てもらえばわかりますが、「必ずステンレス製であること」とは、どこにも書いていません。

また、「それぞれの台が独立していること」とも書かれていません。

なので、会議机のような長テーブル1を3つに区切って、それぞれ(1)作業スペース、(2)放冷スペース、(3)包装スペースとするだけでもOKなんです。

ステンレス製の台を3台新品で買おうものなら、4万円x3=120,000円です。

でも、長テーブル1台(180cm)なら8,000円ほどです。

めちゃくちゃな差ですよね。

こう言ったことを知らないと、やはり高くつくんですよね。

バラエティーに富む保健所さん

保健所は、実はおもしろいんです。

全国で統一性がないんです。

福岡はオッケーやけど大阪ではダメ。

京都はダメだけど大阪はオッケー。

「どっちやねん!」みたいな話によくなります。

だから、他の地域の保健所情報は参考にはしても、最終的には物件のある管轄の保健所の話を聞くのが正解です。

ただし、保健所さんは立場上「教科書通り」のことしか言ってくれません。

それを鵜呑みにして工事を頼んだりすると、上記のステンレス製の話ではないですが、とんでもない費用になってしまったりします。

「え?それで許可おりるの!?うそぉ〜ん」みたいなことがたくさんあるので、保健所ではなく、実際に飲食店やキッチン工房をやっている人にも聞くのがベストです。

え!?そんなんで許可おりるの?

思い込みとは恐ろしいもので、「勝手に必要」と思ってたものが、実はいらなかった、、、なんてこともよくあります。

そんな例を2つほど。

1つ目は、菓子製造許可ではないですが、飲食店営業許可をとるときに必須の扉付きの食器棚。

ほとんどの飲食店の厨房についていますが、実は、食器棚でなくても許可は下りるんです。

例えば、衣装ケース。

要するに、食器をホコリや虫から隔離できればいいだけなんです。

必ずしも戸棚でなくてもいいんです。

2つ目は、換気扇。

ガスコンロの上には必ず換気扇が付いているものですが、菓子製造許可のために「換気扇は常設のこと」という文言もないです。

「換気しやすければよい。」

なので、当キッチンのように壁一面の窓を開けて使うことが前提なら、換気扇という設備はいらないってことになります。

まあ、夏と冬はそーいうわけにもいかないんで、換気扇はつけてますけどね。

あと、キッチンカーの許可をとる場合は、逆に換気扇は必須設備になっています。

いろいろあっておもしろいですね。